ツーバイフォーの間取りで「耐力壁」が必要なのは知っているけど
どうやって配置したらいいのかわからない。
設計士に提案された間取りに満足できない。
なぜここに壁が必要なのかを知りたい。
そんな初心者の方々に向け、ツーバイフォーの耐力壁ルールに的を絞り、
難しい内容を省き超わかりやすく解説します。
☑本記事の内容
・ツーバイフォーにおける耐力壁とは何か
・押さえておくべき耐力壁設置ルール
・耐力壁設置を考慮した間取りの考え方
ツーバイフォーの耐力壁とその設置ルール
ツーバイフォー工法には耐力壁というものが必要でその設置にはルールが決まっています。
ルールと言われても雲をつかむような話かもしれませんが、
できるだけわかりやすく順に説明していきます。
ツーバイフォーにおける耐力壁とは
ツーバイフォー工法って何だろう?そう思って検索してみると、
壁と床で建物を支える「面構造」とか、「六面体」とか、
「モノコック構造」という言葉を目にすると思います。
モノコックなんて聞き慣れない言葉言われても意味わからないですよね。
昔からある木造(在来工法)であったり、鉄筋コンクリート造・鉄骨造の多くは
柱と梁(柱と柱の間に設置する横部材)で構成し壁・床を肉付けするのに対し
ツーバイフォー工法は建物の当たり前の部材である壁・床で構成する工法ですよと
そんな感じなのです。
そして、その建物を支える壁というのが「耐力壁(たいりょくへき)」と
呼ばれるものだという事は、直感的にわかると思います。
では建物を構成すると言う「床」についてはどうでしょうか。
(ちなみに、ツーバイフォーの構成部材で言う「床」には屋根面も含まれます。)
2階建ての家を想像してみてください、、
2階の壁に屋根面載りが、1階の壁に2階床が載っかっていますよね。
なので床って、建物を支えるというか支えられている側なのでは?
なんて思いませんか。
確かに、耐力壁だけを考えると、床なんて壁の上に載せるお荷物です。
なのですが、
ツーバイフォー工法では床面で受けた力が壁へ伝わるというのが考え方であり
床も立派なツーバイフォー建物構成部材となります。
ツーバイフォーの設計では、壁に力が伝わるように
床を壁へ上手に載せていくというイメージが重要です。
なぜ耐力壁のルールに従わなければいけないのか
ツーバイフォーの耐力壁には設置ルールがあると冒頭に述べました。
なぜそれに従わなければいけないのかと言えば、、
それは、
法律でそのように決まっているからです。
と、雑な言い方になってしまうのですが
ツーバイフォー工法では、壁はこうしなさい、床はこうしなさいと
各部材等について明確に法規的に規定が定められていますので
それに従わなければ建物を建てる事はできません。
(一部規定については構造計算等による安全の確認を行えば回避する事もできます。)
「法律にあるから従え」とは聞こえが悪いのですが、
最低限守るべきルールがあることにより
ツーバイフォー工法は安全な建物として運営されるようになり
一般的に普及されるようになりました。
もし、ツーバイフォーにルールが定められていなかったら・・・
安全確認が困難で、採用されにくい工法扱いになります。
逆にルールをきちんと守れれば構造に詳しくない人でも
安全な家を設計しやすいとも言えるのです。
そんなわけで、
ありがたいルールを守ってツーバイフォー工法の家を計画していきましょう。
ルールその1:耐力壁区画
それでは実際にツーバイフォー工法の耐力壁ルールについて解説していきます。
まずは「耐力壁区画(たいりょくへきくかく)」についてです。
耐力壁区画はツーバイフォー工法のプランニングにおいて最も重要なものになります。
ここではその耐力壁区画について説明していきます。
耐力壁線と耐力壁区画
ツーバイフォー工法では耐力壁を含むラインを耐力壁線と呼び、
その耐力壁線で囲まれた範囲を耐力壁区画と呼びます。
この説明ではわかりにくいと思うので以下の図で確認していきましょう。
そこそこありがちな二階建て一軒家の一階部分の間取り図です。
赤い線が耐力壁線で、その赤い線で囲まれた範囲が耐力壁区画となります。
区画のやり方・考え方
「それでは耐力壁区画をより理解するために実際に作みましょう。」
と言われても何をどうすればいいかわかりませんよね。
とりあえず、今回の例では以下の要領で耐力壁区画を作りました。
- 外周を耐力壁線として囲う
- 建物内で壁があるラインを見つけてそれを耐力壁線として 外周区画を分割する
(上の図だとX8軸のLDKと玄関の間の線)
まずはこれだけできれば大丈夫です。
耐力壁区画として外周を囲うのはなんとなくわかると思います。
なのでこれは問題ありませんよね。
もう一分割したのは、
一般的な戸建て住宅の場合、1階の床面積が40㎡前後となります。
後に紹介しますが一区画は40㎡以下とするのが望ましいので
二区画は作るようにします。
ここで一つ重要なことが有ります。
ツーバイフォー工法における耐力壁というのは、
この耐力壁線上にある壁のみそれとして扱うことができるという事です。
例えば、上の図におけるY4軸のLDKと廊下の間にある壁(黄色)ですが、
これは耐力壁線上にはない壁なので、どんなに頑丈にしようとも
耐力壁とはみなすことができません。
ツーバイフォー工法はルールがしっかりしている分
それを守ればそこそこ頑丈な家の設計が可能です。
なのでまずは最低限のルールを知る為に今回は二区画にする設計の紹介をしました。
もちろん、「耐震等級3」と言われるようなより安全性の高い建物を目指すのなら
もっと細かく区画して耐力壁を増やす必要があります。
例えば今回の間取りでもう少し区画を細かくするとすれば以下のようになります。
先程紹介しましたY4軸の壁もこのように耐力壁区画を構成する耐力壁線上にすれば
耐力壁として見なす事ができるようになります。
但し、耐力壁線上にある壁の全てを耐力壁としてみなすことはできません。
ツーバイフォー工法のルールに則った壁のみ耐力壁としてカウントできます。
次からはどのような壁が耐力壁とする事ができるか等のルールを紹介していきます。
ルールその2:必須耐力壁の配置ルール
ツーバイフォーで間取りを考えるに当たって
必ず知っておかなければならない耐力壁について
最低限のルールは以下になります。
- 耐力壁の長さと厚さ
- 耐力壁の相互間距離12m以下
- 耐力壁区画面積制限40㎡以下
- 外周交差部には耐力壁を90cm以上設置
- 開口幅は4m以下
- 耐力壁線上には1/4以上の耐力壁を設ける
- 90cmを超える開口部にはまぐさを設ける
以上について順番に説明していきます。
①耐力壁の長さと厚さ
耐力壁は、建物にかかる力を受けるので
その長さが短すぎると上手く機能しなくなります。
よってある程度の長さが必要となります。
ただ、
実は必要最低耐力壁長さについては法律では決まっていません。
なので、本当は何cmでもいいのですが、
日本ツーバイフォー建築協会という組織による見解では
90cm以上確保しましょうとしているので、
この数値を基準と考えればいいです。
(もちろん90cmという数値とした根拠もあります)
ちなみに、構造計算による確認を行えば60cmまでは
みていいともしています。
続いて壁の厚さです。
これに関係する法律としては使用できる部材寸法規格についての
規定があるのですが今回はあまり関係ありません。
関係するのは、その使い方です。
ツーバイフォー工法の壁はツーバイ材と呼ばれる部材をたくさん並べて
そこに面材(合板や石膏ボードなど)を張って壁を作っています。
例えば今回の間取り例の「洗面・脱衣所」にあるような引き戸です。
この引き戸では扉を壁厚内に納める為に一部壁厚を薄くしています。
こういった薄い壁は耐力壁として機能しなくなります。
引き戸箇所拡大すると以下の図のようになります。
赤斜線で囲まれた箇所は204材を横使いしている薄い壁なので
耐力壁とすることはできません。
一般的な使用規格であるツーバイフォー(204)、ツーバイシックス(206)材
は長方形の形をしています。
それを横にして面材を張る薄い壁は耐力壁にはできないのでご注意を。
②耐力壁の相互間距離12m以下
耐力壁(耐力壁線)の相互間距離というのは、
耐力壁区画の長さになります。これを12m以下にしないといけません。
今回の例の間取りですと相互間距離は最大で7,280mmになりますので
ルールの範囲内ということになります。
普通の住宅の場合、12mを超える事はほとんどありませんので
なんとなく頭の片隅に置いておいてください。
うちの間取りやけに耐力壁区画長くない?と感じたらチェックです。
③耐力壁区画面積制限40㎡以下
耐力壁区画の面積は40㎡以下にしましょうというルールです。
例えば今回の間取り例ですと、大きい方の耐力壁区画の面積は39.8[㎡]です。
7.28[m] × 5.46[m] = 39.8[㎡]
結構ギリギリですが40[㎡]以下になりますのでルールの範囲内です。
今回の間取り例は、一般的な建売住宅より少し大きいくらいの規模です。
超大豪邸でなければ二区画でルール内にだいたい納まりますよね、
という事で、
耐力壁区画の説明の時にまずは二区画をめざしましょうと紹介しました。
ちなみに、適切な補強を行うことでこの40㎡制限は
60㎡へ、もっと補強すれば72㎡までとすることも可能ですが、
この緩和措置についてはあまり一般の住宅向きではないです。
④外周交差部には耐力壁を90cm以上設置
建物の外周の耐力壁区画の交差部についてです。
今回の間取り例だと以下の青丸で印のついている箇所の事を指します。
この外周交差部には縦方向、横方向どちらかでいいので
90センチ以上の耐力壁を設けましょうというルールとなります。
例えば、階段に陽の光が入る明るい間取りにしたいからと
以下の様な窓をつけたいと思っても
縦横両方向で開口となる計画はツーバイフォー工法では採用できません。
(※両面開口については適切に行えば緩和措置で採用する事は可能ですがここでは省略します。)
⑤開口幅は4m以下
耐力壁線上における開口部長さの制限についてです。
ここで言う開口部とは
耐力壁線上にある窓やドアはもちろんですし、さらに
耐力壁とは見なす事の出来ない短い壁、薄い壁も含みます。
一つの窓が4m超えるのはもちろんダメですし、
小さな窓が連続していてその端から端までが4m超えるのもダメです。
この4m開口はその取り方について、色々な条件があり
全てを説明するととても長くなってしまうので、今回は
代表的な例 を二つご紹介するので参考にしてください。
その1として開口部の合計について紹介します。
今回の間取り例を少しいじって廊下とトイレの開口部を大きくとったとします。
赤く塗った箇所は耐力壁です
黄色は長さが短くて耐力壁とみなすことができない壁です
青色は開口部(窓)です
トイレ、廊下そして階段は開口部が三つ連続しいていて、
途中に耐力壁が無い状態です。
この場合は次に耐力壁が来るところまでが開口部としてみなされます。
そしてその個所の合計が403.5[cm]となっていて、4mを超えていますので
ツーバイフォーのルールか逸れてしまうので戸の間取りは採用できません。
なのですが、
実はこれは誤りです。
「代表的な例」その2として、開口部の分割について紹介します。
合計開口部403.5[cm]の途中に壁が途中にあるのにお気づきでしょうか。
以下の位置の壁(緑色着色)です。
この壁は耐力壁線上にある90[cm]以上の壁なので耐力壁です。
そして、耐力壁と直交する開口部は分割されます。
よって合計開口部403.5[cm]というのは誤りで
318.5[cm]と85[cm]の二つの開口部という状態が正しく
ツーバイフォー工法のルール内という事になります。
⑥耐力壁線上には1/4以上の耐力壁を設ける
1本の耐力壁線全体の長さに対して、
その1/4以上の長さの耐力壁のを確保しましょうというルールです。
(逆に、「開口長さは3/4以下にする」と言い換える事もあります。)
先程の開口幅4mでの例で見てみましょう。
着色してある耐力壁線全体の長さは1,001[cm]です。
その1/4は、 1001÷4 = 250.25[cm]
この数値が、この耐力壁線上の必要壁長さになります。
耐力壁の合計長さは、 97 + 136.5 + 188 = 421.5[cm]なので
250.25 < 421.5[cm] で1/4ルールは満足している。となります
今回の例ではだいぶ開口作ったのに十分余裕があるので
楽勝なルールかもとと感じるかもしれませんが、
南向き道路に面する細長い土地に建つ建物とかになると、
南側に大きな開口をれなくなったりしますし、
建物内部で細かく耐力壁区画を区切ったりするとどこかしらで
耐力壁長さを確保できなくなったり
また、他の耐力壁ルールと合わさって上手くいかなくなったりして
意外と苦労する事もあります。
⑦90cmを超える開口部にはまぐさ(又は下り壁)を設ける
まぐさとは開口部の上に設ける横部材で、その開口部の上部から
伝わってくる力を受ける役割をします。
まぐさ・下り壁がどのような物か図示したものを紹介しますの
参考にしてください。
壁の上には更に横に架かる部材:梁があります。
まぐさに変わってその梁によって力を受けるように
設計(要補強)すればこのルールは適用せず
緩和する事も可能です。
以上が必須耐力壁の配置ルールになります。
今回は“誰でもわかる”を主眼においていますので、
踏み込んだ内容については触れていませんが、
それでも、なかなかわかりにくい箇所もあったかと思います。
今後はさらに各ルールについて、掘下げていく記事も
追加していこうと思っています。
ルールその3:注意事項
前項では耐力壁の必須配置ルールとして7つを紹介しました。
ここでは、必ず守らなければいけないというわけではないけど
無視するわけにはいかないツーバイフォーの間取り作成時
注意事項を紹介していきます。
上下階の関係
これまでのルール説明で使ってきた間取り参考例ですが、
2階建て住宅の1階を使って説明してきました。
この間取りで2階の例としては以下の感じです。
1階を並べると ↓
ここで注目して頂きたいのが1階と2階の耐力壁区画の位置が
揃っているという所です。
ツーバイフォー工法というのは建物にかかる力の流れが
上階から順に 床 → 壁 → 床 → 壁となるので、
上下階の壁の位置がそろっていると力の流れがスムーズになり
構造耐力上とても良いです。
逆に言うと上下階で耐力壁の位置に大きなズレがあると
構造耐力上不利になり、それをカバーする為に不経済な設計を
強いられる原因になります。
場合によっては実現が極めて困難な間取りになる事もあります。
とは言え、上下階をとにかく揃える!というのに縛られ過ぎると
間取り作成がむずかしくなります。
設計(間取りを考えていく)段階でなんとなくでもいいので
上下を意識できると良いです。
耐力壁のバランス配置
ここまで紹介しました耐力壁ルールを守れば法規順守した
ツーバイフォー工法の間取りを作ることができます。
但し、最後にもう一つ気に留めなければいけない事があります。
以下の二つの間取り例を見てください。
家とは程遠いですが、説明用のシンプルな間取りです。
太い線が耐力壁、細い線が開口部です。
①、②の間取りとも耐力壁設置ルール内で作っています。
①の間取りは耐力壁が上方向、横方向共に対称となっており
とてもキレイな状態です。
それに対して②の間取りでは耐力壁が下側と左側に偏って配置されています。
では、どちらが構造耐力上優れた間取りでしょうか。
もう直感的に①の方が優れているというのはわかると思います。
①のバランスのとれた耐力壁配置の建物に地震が生じた場合、
建物全体が同じように振動します。
②の偏りがある耐力壁配置の場合ですと、耐力壁が少ない方(弱い方)が
大きく揺れ建物に多大な負担が生じやすくなってしまいます。
とても危険です。
なのでこのバランス配置については法律でも「気を付ける」ようにと
されています。
どれくらい気を付けなければいけないかという事は明文されていませんので
設計者の判断、構造計算等での確認を行うことが必要となります。
住宅の場合ですと、陽の当たる南側には大きな開口を(壁少ない)
北側には水回りが有るので開口少なめに(壁多い)となりやすいで
ここでバランスの悪い配置ができやすかったりするので注意が必要です。
まとめ
耐力壁設置ルールを知り、自由に間取りを考えよう
以上がツーバイフォー工法における耐力壁配置の必要なルールです。
ツーバイフォー工法には今回の壁に関するもの以外の箇所についても
様々ルールがありますが
間取りを考え場合に関しては今回のルールを押さえておけば大丈夫です。
(但し、各項目についてさらに深くご紹介したい内容はあります)
ツーバイフォー工法のルールについては制約を感じ
やりにくさを感じる事もあるでしょう。
しかし、ルールさえ知っていれば、なぜこの間取りはできないんだ
どうすれば解決できるんだとかいったモヤモヤした気持ちを
解決する事もできます。
つまりルールを知るという事は、「この間取りはできない」という事が
わかるようになります。
逆に言えば、できない事以外は「できる事」でもあります。
今回の記事により少しでも多くの人が
優秀な工法であるツーバイフォー工法がもっと身近になると良いなと
思っております。
(※今回は「わかりやすく」に主眼を置いている為
技術的説明を省いていますので、文言表現が不正確な箇所もあります。ご了承ください)